にしいちブログ

職業体験学習

(かなりの長文ブログです!ご容赦ください)

10月9日、北海道教育大学附属札幌中学校2年生の男子生徒さん5名が、職業体験学習のため当院を訪れました。
予め学校担当者を通じて生徒の皆さんの意気込みや質問を頂いておりました。『何のために働くのか』『仕事をする上で大切にしていること』『医師を目指した理由』など将来のことを真摯に考えていることがうかがわれました。
ご存じの通り病院というところは患者さんの治療を通じて、専門分化された各部署のスタッフ(事務、臨床検査、栄養士、薬剤師、放射線技師、理学療法士、看護師・看護助手、医師)全員が、プロ意識をもちコミュニケーションをとりながら力を発揮するところです。
以下、各部署での様子を綴ります。

●事務(担当:渡辺事務長)
『当院の特徴』について(急性期病院;整形DR全員が日本体育協会認定スポーツDRである;年間手術件数;整形全般なかでも膝・肩・脊椎の内視鏡手術とリハビリに力を入れていること;スポーツ障害に対するアスレチックリハビリを得意としていることなど)、および『病院というところ』について(病院とクリニックの違い;女性職員が多いこととその特徴;治療のオーダーは医師の指示の元に行われるチーム医療であることなど)お話ししました。

●検査課(担当:徳永検査技師)
採血処理、心電図、肺活量測定など、院内業務についてお話ししました。ABO式血液型検査についても説明しましたが、ひとりとても詳しい生徒さんがいらっしゃったのが印象的だったと、担当した徳永検査技師から感想がありました。

 

●薬剤課(担当:大森薬剤師)
入院患者さんの薬剤管理だけでなく、手術予定患者さんに対しては入院する前から薬剤管理に関わっていることをお話ししました(患者の服薬状況やきちんと飲めているか、手術に際して問題となる薬を飲んでいないかなど)。昨今の超高齢社会を反映して、複数の薬剤を飲んでいらっしゃる患者さんが増えています。薬によっては手術前に一時休薬にしなかったばっかりに手術を延期せざるを得なくなることもあります。そのため薬剤師の専門的な薬の管理・チェック・看護師や医師への助言は今やなくてはならないものになっております。 薬剤師が分包器(薬を調剤する機械)の実演をしましたが、生徒さん全員興味津々でした。また麻薬の取り扱い・管理はどうなっているのかなど、急所をはずさない質問も印象的でした。

●栄養課(担当:佐藤管理栄養士)
病院における栄養士の役割、栄養課スタッフの役割分担についてお話ししました。食事は人間の生活にとって楽しみでもあり、また、丈夫な体を作る点でとても重要です。たとえ手術がうまくいっても、また一生懸命にリハビリをしても、適切に栄養を補給しなければ良い結果が得られません。そのことをふまえて病院食の概略、カロリー計算などの基本的なことや当院の『お楽しみ献立』を言葉と写真でお話ししました。ラグビーをしている生徒さんからは、『強くなる食事とは?』と急所を突いた質問もありました。

●看護部(担当:土門主任・小池主任)
生徒さんには3つの患者体験をしてもらいました。

まずは『松葉杖体験しかも片足を浮かして歩く、しかも装具をつけて膝がまっすぐ伸びたまま!』です。最初は簡単にできると思っていた生徒さんも『バランスを取るのが難しい』『痛みがあったらもっと大変そう』『階段とか怖すぎる』など経験しなければわからない感想をいただきました。続いては『車いす・ストレッチャー体験』です。『車いす乗りたい人!?』というと全員積極的に挙手してくれました。生徒さんの感想は『乗っている側は景色がビュンビュン変わるのでゆっくり押してあげることが大切だと思った』『ドアの前では止まることがわかっていてもぶつかりそうで怖かった。もうすぐ止まりますよ、など声をかけたら親切だと思った』『車いすから立つ時はストッパーをかけるなど正しい使い方を守らないと患者さんを危険な目に遭わせてしまう』など、患者目線の大切さを実体験できていました。また、『看護師も自分自身の体を壊さないように移動しやすいストレッチャーの高さにして移送していることを知った』と広い視野で感想を述べていました。最後は『血圧測定体験』です。聴診器でドックンドックンという自分の脈拍音を聞いて『すげー。血圧はどのくらいが正常ですか?』『俺のばあちゃんも毎日血圧測ってる』など一番盛り上がっていました。

●リハビリテーション部(担当:中野理学療法士・阿南理学療法士)
まず理学療法士の仕事について簡単に説明をいたしました。引き続き、当院ではスポーツ選手の患者さんも多いということで、トレーニングなどを実際に体験してもらいました。

ストレッチポールを使ったコンディショニングを体験してもらったときは、姿勢の変化に驚いている様子もみられましたし、バランストレーニングでは見た目と違った難しさを実感していただけたようでした。終始楽しみながら体験されていた様子でした。担当の理学療法士からは、『今回の職業体験を通じて、今後の職業体験の際は理学療法士としての仕事をしっかり伝えられるように努力していきたい』という感想が聞かれ、ホスト役の我々職員にとってもこの職業体験がとても有意義なものであることをあらためて実感いたしました。

昼食をはさんで午後からは、医師による座学と縫合体験を行いました。

●医師部門(担当:小畠副院長)
事前に生徒さんからいただいたたくさんの質問に答える形で、『院外スポーツサポート活動』『医師を目指した理由となってから変わったこと』『日常診療で心がけていること』『仕事をしていて嬉しかったこと・辛かったこと』『私生活との折り合い・生活習慣・お金のこと』そして『何のために働くのか』などスライドを交えて40分ほど熱くお話しをさせていただきました。昼食後の眠くなるだろう時間帯にもかかわらず、とても真剣に話しを聞いていたのが印象的でした。引き続き、模型を使って『皮膚縫合』を体験していただきました。初体験にもかかわらず皆さん飲み込みが早く、完成品の中に『縫合不全』はありませんでした。

みなさん、「将来は人の役に立つ仕事がしたいので医療系の仕事に就きたい」という夢を持った5人でした。そのためか、こちらからの話しを大変興味深く聞いたり質問し、話がどんどん膨らんでゆくというのが印象的でした。医療は人間、とくに病める患者さんや故障したアスリートに関わる仕事であることを忘れないで欲しいと思います。中学2年生といえば思春期まっただ中であり大人になるための練習期間です。これからも医療以外のいろいろなことに興味を持ちながら悩み、成長していっていただきたいと思います。
たった半日のごく限られた体験だったと思いますが、今後の進路を考えるにあたって少しでも役立てていただけたなら我々職員一同嬉しく思います。

 

 

 

 

2018年10月30日 | 投稿者:副院長 小畠 昌規



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