7月5日(土)に札幌肩関節鏡手術セミナーが行われ、実技講師として当院から小畠が参加しました。年1回行われ、今年で11回目になります。このセミナーは、人体模型と本物の手術器械を使って実際の手術を行い、手術のテクニックを学ぶものです。道内各地から集まった計20名ほどの整形外科医が5つのテーブルに分かれて、講師の医者から指導を受けます(図1)。実技に先立ち、その道で活躍している道外の肩関節鏡専門医のレクチャーを受けます。今回は東北大学の山本宣幸先生から、『肩関節鏡手術に役立つバイオメカ知識』と言うタイトルでレクチャーをいただきました(図2)。今回は当院の手術室看護師の中から3人(主任1名、新人2名)が参加し、五感を使った経験から新たな気づきを得たようです(図3)。
現在、膝や肩のみならず腰椎や肘、手関節、足関節といった様々な関節の診断・治療ツールとして関節鏡が使われています。関節鏡手術はキズが小さいという美容上のメリットがありますが、それよりもむしろ、病変が存在する肩関節の内部(最も深いところにある)の途中にある健常な筋肉や靱帯に不必要な傷を付けなくてすむということ、また従来の直視下手術(内視鏡ではなく、肩を開いて直接目で見ながら行う手術)では見えない、細かな病変部分やキズが大きなテレビモニターに映し出されるため、精巧で精緻な手術が可能となります。しかも執刀医だけでなく、助手や手術室の看護師、麻酔科医といった手術室のスタッフみんながテレビモニターを見られるため、スタッフ教育の点でも非常に有用です。
当院では2001年からいち早く肩関節鏡手術を導入し、これまでに1000例を超える肩関節鏡手術を行い良好な成績を収めています。さらに、よりスマートな手術方法や新しい手術方法に習熟するため、海外で行われる実際の屍体肩(したいかた)(亡くなった人の体を薬液につけたもの)を使った手術トレーニングセミナーに定期的に参加しております(図4)。ちなみに日本では、医学生の解剖学実習では屍体の使用が認められていますが、手術器械を使っての手術トレーニングは、制度上の問題から認められていませんでした。しかし関係者の5年越しの働きかけにより、ようやく一昨年の12月に日本(それも札幌の地)で最初の屍体肩を使った手術トレーニングセミナーが行われました。まだいくつかの課題はありますが、一つ一つ乗り越えて、今後発展してゆくものと信じております。それにより医療技術の進歩、ひいては患者さん・アスリートの治療成績のさらなる向上につながるものと考えております。
2014年7月13日 | 投稿者:副院長 小畠 昌規