7月6日(土曜日)、札幌市で『第10回札幌肩関節鏡手術セミナー』が開催され、当院の小畠と野中が実技指導の講師として参加してきました。このセミナーは、ハンズオン(人体模型と本物の手術器械を使って、実際の手術を行うもの)を中心とした、肩関節鏡(肩専用の内視鏡)を使った手術のテクニックを学ぶものです。その道で活躍している道外の肩関節鏡専門医をお招きしてレクチャーをしていただいたあと、テーブルに分かれてハンズオンが行われます。
普通、肩や膝の学会といえば、『私たちの施設では、これこれこういう手術を100人の患者さんに行い、どのくらい良くなりました』といった総括的な発表が主流ですが、このハンズオンセミナーでは、『この手術はどのような手順で進めてゆくのか? また、どんな点に気をつけなければならないのか?』といった実際の手術のコツや落とし穴を学ぶため、明日からの診療、手術に直結した勉強ができます。
今回は道内各地から集まった計20名ほどの整形外科医が、4つのテーブルに分かれて、講師の医者から指導を受けました。出席者の事後アンケートによると、大変わかりやすい指導だったということで、好評のうちに終了しました。
現在、膝や肩のみならず腰椎や肘、手関節、足関節といった様々な関節の診断・治療ツールとして関節鏡が使われています。関節鏡手術はキズが小さいという美容上のメリットがありますが、それよりもむしろ、病変が存在する肩関節の内部(最も深いところにある)の途中にある何ともない筋肉に不必要な傷を付けなくてすむということ、また従来の直視下手術(内視鏡ではなく、肩を開いて直接目で見ながら行う手術)では見えない、関節の中の細かな病変部分やキズが大きなテレビモニターに映し出されるため、精巧で精緻な手術が可能となります。しかも執刀医だけでなく、助手や手術室の看護師、麻酔科医といった手術室のスタッフみんながテレビモニターを見られるため、スタッフ教育の点でも非常に有用です。
当院の肩関節鏡外科医(小畠、野中)は2001年からいち早く肩関節鏡手術を導入し、これまでに1000例を超える肩関節鏡手術を行い良好な成績を収めています。さらに、よりスマートな手術方法や新しい手術方法に習熟するため、海外で行われる実際の屍体肩(したいかた)(亡くなった人の体を薬液につけたもの)を使った手術トレーニングセミナーに定期的に参加しております。ちなみに日本では、医学生の解剖学実習では屍体の使用が認められていますが、手術器械を使っての手術トレーニングには、制度上の問題から認められていませんでした。しかし関係者の5年越しの働きかけにより、ようやく去年の12月に日本(それも札幌の地)で最初の屍体肩を使った手術トレーニングセミナーが行われました。まだいくつかの課題はありますが、一つ一つ乗り越えて、今後発展してゆくものと信じております。それにより医療技術の進歩、ひいては患者さん・選手の治療成績のさらなる向上につながるものと考えております。
(おばりん記)
2013年7月15日 | 投稿者:副院長 小畠 昌規